第39回日本足の外科学会・学術集会

会長挨拶

野口 昌彦	至誠会第二病院 整形外科・足の外科センター

平成26年11月13日、14日の両日にわたり「第39回日本足の外科学会・学術集会」を宮崎市の「シーガイアコンベンションセンター」で開催させていただきます。恩師の京都府立医科大学名誉教授 榊田喜三郎先生が第11回を京都で主催された伝統ある本学術集会の会長を務めさせていただきます事を大変光栄に存じますとともに、このような機会を与えていただきました会員の諸先生方に心より感謝申し上げます。

本学術集会は東京女子医科大学整形外科学教室 加藤義治主任教授をはじめ教室・同門の諸先生方、宮崎大学整形外科学教室 帖佐悦男教授、NPOオーソティックスソサエティー、奈良県立医科大学、帝京大学および京都府立医科大学の各足の外科班、千代田病院(宮崎県日向市)、至誠会第二病院の協力を得て、今までの学術集会に劣ることのない実り多き学術集会にすべく開催準備を進めて参りました。

高倉義典前理事長、木下光雄理事長、足の外科普及プロジェクト委員会の諸先生方のご努力により会員数は1500名に近づきつつあります。それに伴い、応募演題数も増加し、本学術集会におきましては日本足の外科学会・学術集会では初めて400題を超え450題の演題をいただきました。

第39回日本足の外科学会・学術集会のテーマは「足の外科のプロフェッショナルを目指して“On becoming more expertise in Foot and Ankle Surgery"」と致しました。足関節・足部の関節は比較的小さく解剖学的にも複雑であり、守備範囲が広いのでプロフェッショナルになるには時間もかかります。一方、大変やりがいのある分野であり、奥行きの深い足の外科に志のある若手の先生、プロにあと一歩の先生、プロの域に達している先生、皆がいつまでも“becoming more expertise"を目指して切磋琢磨できる学会にしたいと考えております。今年、シカゴで開催されたIFFAS(9月19日−21日)、AOFAS(9月21日−23日)に参加し刺激を受けられた先生方も多いと思います。活発な討論を期待しております。

基調講演として本学会副理事長で奈良県立医科大学整形外科学教室教授 田中康仁先生に「我が国におけるフットケアの現状と課題」と題してご講演いただきます。田中康仁教授は今年3月に第12回日本フットケア学会の会長を務められており、フットケアの現状を踏まえ、その課題、足の外科の関わりをご講演いただけると思います。特別講演は足の外科の第一人者、前理事長の高倉義典先生に「変形性足関節症の病因と治療 −40年の経験から−」をお願いしました。高倉先生は何度も“普通の教育講演で"とおっしゃいましたが、敢えて「特別講演 ザ・プロフェッショナル」とさせていただきました。私は1981年卒業ですが、最終的に足の外科を専門にやっていこうと思ったのはアメリカ留学中の1990年から1992年にかけてでした。それはその当時、日本では聞いたことも見たこともないposterior tibial tendon dysfunction(PTTD)あるいはacquired adult flatfoot deformity or adult acquired flatfoot deformity(AAFD)に出会ったからです。そこで招待講演はカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)留学中にお世話になり、現在はVirginia Commonwealth University の教授である Jennifer S. Wayne 先生に「Patient Specific Computational Modeling of Surgical Correction for Adult Acquired Flatfoot Deformity」と題する講演をお願いしました。もう一つの招待講演は、私の同級生であるシカゴのRush University Medical Center 教授の井上望先生に「医用画像ベースのバイオメカニクス−足の外科への応用」についてお話ししていただきます。今後の足の外科研究に役立つと信じております。また、特別企画を二つお願いしました。小児整形特別企画とスポーツ整形特別企画です。小児整形特別企画は仙台赤十字病院 北純先生の立案で「凹足変形の病態・治療」について5名の指定演者に発表していただきます。スポーツ整形特別企画は私の同級生で国民栄誉賞を授与された“なでしこジャパン帯同ドクター"の原邦夫先生に「なでしこジャパンのメディカルスタッフの活動と競技復帰への医科学サポート」と題して実際の現場の話も踏まえご講演いただきます。最近、変形性足関節症の治療においてDistal tibial oblique osteotomy(DTOO)が全国的に普及し本学術集会でも多くの演題登録がございます。それを踏まえ、従来のLow tibial osteotomy (LTO)とDTOO のディベートを倉秀治先生(LTO)と寺本司先生(DTOO)にお願いしました。座長はザ・プロフェッショナル山本晴康先生に無理を言ってお願いしました。ご期待ください。

また、教育研修講演は足の外科のプロフェッショナルを目指すためには広く知っておくべき知識という意味で「教育研修講演 −プロフェッショナルを目指して−」を7つお願いしました。

  1. 「運動器疾患及び糖尿病合併患者のトータルフットケア」
    新城孝道先生(メディカルプラザ篠崎駅西口)
  2. 「重症虚血肢の大切断を如何にして回避するか」
    笹嶋唯博先生(江戸川病院血管病センター)
  3. 「後足部における下肢機能軸の評価」
    原口直樹先生(東京警察病院)
    「後足部撮影とその重要性」
    生駒和也先生(京都府立医科大学)
  4. 「Diagnosis and Treatment for Lateral Instability of the Ankle-Learning a Lesson from the Past」
    James W. Stone 先生(The Orthopaedic Institute of Wisconsin)
    Jin-Woo Lee 先生(Yonsei University)
  5. 「New Trend of Surgeries for Lateral Instability of the Ankle-Arthroscopic Reconstruction」
    Stephane Guillo (Clinique du Sport de Bordeaux Medignac)
    高尾昌人先生(帝京大学)
  6. 「足部に好発する骨腫瘍の診断・治療」
    羽鳥正仁先生(東北公済病院)
  7. 「足部・足関節症状に潜む脊椎関節炎について」
    首藤敏秀先生(千代田病院)

共催セミナーとしてはモーニングセミナー、ランチョンセミナー、イブニングセミナーを準備しました。モーニングセミナーは高井信朗教授(日本医科大学)、ランチョンセミナーは熊井司教授(奈良県立医科大学)、橋本淳先生(大阪南医療センター)、渡部欣忍教授(帝京大学)、Eric Giza 先生(University of California,Davis)、杉本和也先生(奈良県総合医療センター)、桃原茂樹教授および矢野紘一郎先生(東京女子医科大学)、イブニングセミナーは井上雄一教授(東京医科大学)を予定しております。

シンポジウム、パネルディスカッションは、以前から私の興味の中心にあり日常診療における治療方針を決定するうえで明確にしておかねばならないと考えているテーマを選びました。シンポジウムではそれぞれの分野のエキスパートにお願いし講演していただきます。パネルディスカッションでは、会場の新進気鋭の先生方には「足の外科のプロフェッショナルを目指して」是非ともディスカッションに参加していただきたいと考えております。シンポジウムは「後脛骨筋腱機能不全の診断と治療」、「足部Charcot 関節症の診断と治療」、パネルディスカッションは「関節鏡視下足関節外側靭帯再建術」(帝京大学 高尾昌人先生企画)、「強剛母趾の診断と治療」、「RA 前足部障害に対する手術法の選択」、「MTP 関節脱臼を伴う外反母趾の治療」です。

East Asia Session では韓国の先生6名(うち2名はVisiting Fellow)と日本から2名の先生方に発表していただきます。1990~92年の2年4ケ月の間に私が留学中に勉強したことは現日本医科大学主任教授 高井信朗先生の後を引き継いだ基礎分野(靭帯、腱のバイオニクス)が主で、UCSD からピッツバーグ大学に異動してから少々臨床(足の外科)を勉強する機会を得ました。その少しあとから韓国の先生方はアメリカの足の外科で有名な先生のもとにどんどん留学し臨床を学び韓国に戻ってリーダーとなり、高倉義典先生が危機感を持って指摘されているように韓国の足の外科は相当高いレベルに達しています。若手の先生方にはEast Asia Session の講演を聞いて奮起されることを期待しております。

ハンズオンは3つの予定です。最近、医療機器メーカー各社は足の外科分野にかなり力を入れており、経験豊富な講師の実践レクチャーで手技を習得していただけると考えております。またDYMOCO インソールに関するレクチャーと実践指導もございますので奮って参加くださいますようお願い申し上げます。

なお、13日のイブニングセミナー、ディベート終了後に19:10から全員懇親会(参加無料)を開催します。昨年Japanese-Korean Travelling Fellow として韓国を訪問された札幌医科大学の寺本篤史先生と大手前病院の林宏治先生には全員懇親会でその報告をしていただきます。

北海道から沖縄まで全国の皆様から多くの演題をご応募いただき心から感謝しております。厚く御礼申し上げます。シンポジウム、パネルディスカッション、小児特別企画、ディベートを除く主題41題と一般演題332題(合計373題)に指定の77題を加えると450題となりました。そのうち「骨折の治療」「距骨骨軟骨損傷」「変形性足関節症の治療1」「変形性足関節症の治療2」「足関節靭帯損傷」「陳旧性アキレス腱断裂」「重度外反母趾」「スポーツ障害」を主題発表としました。一般口演発表は144題、ポスター発表は188題となります。症例報告の中には興味ありじっくり口演発表で聞きたい演題も多いのですが、口演発表での時間枠がなくポスター会場にて活発な討論をお願いする次第となりました。どうかご理解くださいますようお願い申し上げます。

今回の学会開催期間は、会場の目の前の日向灘に面したフェニックスカントリークラブで開催される第41回ダンロップ・フェニックストーナメント(11月20日~23日)のちょうど1週間前になります。学会で大いに発表、議論、勉強された後は是非、ゴルフ、テニス、サイクリング、ドライブ、霧島温泉(シェラトングランデにも温泉があります)や西都原古墳などの遺跡めぐり、会場から徒歩で行ける神々が生まれたとされる江田神社の御池(みそぎ池)をはじめ神話の旅、九州・宮崎を楽しんで頂ければと願っております。本籍和歌山県、京都育ち、東京在住の私が宮崎を選んだ理由は、まず宮崎がリゾート地であること、私は長年宮崎県日向市の社会医療法人 千代田病院に関わってきており宮崎に愛着があること、の二つが大きな理由です。私の最初の留学先がリゾート地サンディエゴのカリフォルニア大学(UCSD)であったことも少なからず影響しております。ご理解くださいますようお願い申し上げます。また、少人数で準備して参りましたため不行き届きな点が多々あるかと存じますがどうかご容赦くださいますようお願い申し上げます。

最後に、本学術集会開催のためにご尽力いただきました諸先生、事務取扱、ご協力いただきました企業各社に心からお礼申し上げますともに、多くの先生方に宮崎でお会いできることを願っております。